人付き合いの難しさ

 何かを好きになることと嫌いになることでは執着、価値の定量という意味では同じだが、価値基準の採点方式には明確な違いがあるような気がする。

 好きという判断における採点法は加点式であり、好きな要素がそのほとんどは無意識、何となくという言葉で表され総合的な採点であることが多い。

 一方で、嫌いとなると、途端に減点式になってしまう。それゆえ、例え嫌いな点が1つであってもその1点が決定的なものである場合、嫌うには十分となる。

 そのため、好きである理由は探す必要があるが、嫌いである理由は出てきやすい。嫌いとは総合的な採点ではないからだ。逆に言うと、物事を総合的に、全体として好きなところ、嫌いなところ、良いところ、悪いところと考え始めると、意外と嫌いなものはなくなっていく気がする。良いところが目に入ると、どうしても大目に見たくなってしまうのだ。これはこと人間関係において良くあることで、その人をずっと嫌いでいたいなら徹底して距離を置いて関わらないことだ。関わりを持つと、どうしても1つぐらい良いところが見えてきて、完全に嫌うことが出来なくなり、なんならその人を嫌ってしまってるという罪悪感まで発生してしまう。

 人間関係を整理し、付き合いのある人は少しでいい。そういう生き方をする場合、人を切る勇気を持つことより、人を嫌いでい続けられるような工夫を凝らすことの方が大切な気さえしてきてしまう。