削られ、削られ、残ったもの。

ふと昔を思い出す。

なんの脈絡もないのに、あの時が蘇る。

思い出なんて、どうしようもなく素晴らしいに決まってる。時間によって風化されたそれは、美しい部分だけ残して、細かな部分は全て時間に流されてしまった。

今はもう会えない。ひょっとして、おそらくはもう二度と会わないかもしれない人のことを思い出すんだ。あいつと過ごしたあの時間。ああ幸せだったな、と。

幸せとは噛み締めるものではなくて、振り返ることなのかもしれない。

よぼよぼになんてなりたくないし、いつまでも若くいたい。そう願うけれど、歳を重ねて、何十年後、僕が僕の人生を振り返る時、僕はどんな幸せを振り返ることが出来るのかを考えると、歳をとることも悪いことだけではないかもしれないと、少しは思う。